地元暮らしをちょっぴり楽しくするようなオリジナル情報なら、西条の地域情報サイト「まいぷれ」!
文字サイズ文字を小さくする文字を大きくする

西条の地域情報サイト「まいぷれ」西条市

さぁ、お遍路へ行こう。

第三回 遍路ころがし (11)藤井寺~(23)薬王寺

東京にお住まいの関本拓司さんが四国八十八ヶ所の歩き遍路の体験を紀行文としてまとめられました。様々な体験の中で、率直に感じた想いを書き綴っています。

1.荷物の減量

長く歩いていると、やはり荷物の重みが肩にのしかかる。腰、背中も痛くなる。家にかなり置いてきて、必要なもののはずだが、まだ家に送り返せるものがないかチェックしてみた。虫刺され、線香1束、ハンカチ、タオル、コンタクト洗浄剤、テーピング細巻等1キロ相当を郵便局から家に送った。

 

遍路ころがしを前に、着替え、スケッチブック予備、薬等を次の宿に送り、雨具、頭陀袋のみで歩いた。

 

荷物を持ち歩くことになると、それでもまだ荷物が負担になる。リュックサックが体にフィットしていないことに気付いた。持参したリュックサックは約20年前に購入したもので、かなりへたっていた。新規に買い替えねばとの思いで徳島市のアウトドア専門店ヘ駆け込んだ。最新のドイツのDeuter製のものを勧められた。背中に網があり風通しの良い機能が気に入り、適当な容量のものを購入できた。体にフィット感があり、重心が上になり、肩への負担が軽減した。

 

リュックサックを買い替えたが、更に減らせるものはないかチェックした。下着、靴下、シャツ(長袖、半袖)は、毎日洗濯すれば、2日分で済むことがわかって、それぞれ1枚減らせた。マッチも使わないからいらない。テーピング太巻も豆が出来ないから不要。マスクも5枚から2枚へ、冷却シートも4枚から2枚へ等更に減らした。

2.同行者

宿で居合わせた72歳の方と一番目の遍路ころがし藤井寺~焼山寺まで一緒に歩くことにした。これが正解だった。一人だとちょくちょく休憩しがちだが、二人だと一緒に付いて行く頑張りがでてくるのだ。お互い励ましあい、ペースが落ちず、通常6時間かかるコースを5時間で遍路ころがしを乗り越えられた。

 

2番目の遍路ころがし鶴林寺~太龍寺の時も、前方を歩いていた昨日知り合ったお遍路と同行した。登りは、それぞれのペースで登り、下りは、声を掛け合い注意しながら同じペースで下った。長い農道は、話しながら歩いた。

 

焼山寺~大日寺までは、長い県道を前方を歩いていたお遍路と話しながら歩いた。初めて知り合ったのに、家族のこと、墓の管理まで旧知の人にも話さない内容を話題にしたのには驚いた。彼とは、メル友になり、お互いの状況を伝え合い、後日結願の際は、お祝いの電話を頂いた。

3.へんろ小屋

お遍路向けの休憩小屋は道中随所にある。公共のものは、道の駅、公園位で、それ以外は、ほとんどが民間の方の善意で設置、運営されている。その中で、近畿大教授の建築家歌一洋さんの呼び掛けで出来たへんろ小屋プロジェクトのへんろ小屋に出会えた。地域の方をはじめ、全国の協力者の方々の善意で、土地を提供する人、資金を提供する人、建設の労を提供する人、運営する人等の協力を得て、モダンな設計で人目を引く。因みにへんろ小屋1号は、歌一洋さんの出身地徳島県海陽町にあった。そこでは、地域の方が当番で接待し、栄養ドリンクを提供する接待所として運営されていた。

 

 

4.遍路宿

さまざまなタイプの宿に泊まった。老舗の旅館、保養所からの転身宿、地域の旅館、落ち着いた小規模な民宿、道の駅の宿、農家民宿、おかみさんだけで切り盛りしている民宿、国民宿舎、サーファーの宿、温泉民宿、遍路宿など。遍路をしていると、洗濯が一番大事だ。次に宿のおとうさん、おかあさんの人柄。真心が感じられる食事。清潔で設備の整っていること。そしてコストパフォーマンスだ。この条件を当てはめると、17番井戸寺の門前にある「おんやど松本屋」が良かった。金剛杖の洗浄、洗濯のお接待、品のある応対、懐石風の綺麗な美味しい食事(朝食では大きなだし入り卵焼き)、古い家だったが、庭付きの部屋、布団敷き、ウォシュレット付きトイレ、清潔な風呂等、非の打ち所がないこじんまりとした宿だ。おかあさんが前面にでて、おとうさんは表に出てこなかったのが残念だ。この他、鶴林寺の裾野の農家民宿鶴風亭も良かった。おとうさんは、尺八の先生でもあり、おかあさんと一緒に笑顔の温かい応対で、地域のことをよく話してくれた。おにぎりのお接待は山登りのお寺の参拝時は助かった。藤井寺の近くの老舗さくら屋も良かったがウォシュレット付きトイレでなかったのは困った。24番最御崎寺手前15キロの遍路宿のロッジおざきもおかあさん、お嫁さんが切り盛りしていて、地元名物のキンメの煮付け、トコブシ、カツオの刺身、ビワを食事に出して頂け、金剛杖の洗浄、洗濯のお接待は助かった。これらの宿は、インターネット等の口コミで事前に知ることができた。 

5.生活のリズム

宿に着くと、まずは洗濯と風呂、食事前に今日のまとめ。(歩行距離、歩数、日記、交流した遍路名、受けたお接待)次に明日の準備(コース下調べ、ローソク、線香の充填、納め札の記入)そしてメールのチェックと返信、手紙の作成等をやり、21:30就寝、翌朝5:30起床、6:30朝食、7:00出発、14:00~15:00宿着のリズムができてきた。そして週に一度は休養日を設け、遍路状況メールの発信、SNSへの投稿と返信、遍路レポートの作成、水彩画の作成、そして観光と温泉だ。日和佐では連泊し、ウミガメ博物館へ行ったり、アカウミガメをスケッチしたり、温泉に入ったり、名物の南阿波丼(アオリイカ丼)を昼に食べに行った。

6.雨対策

雨の日も嫌がらずに雨に親しむことにした。その対策としては、ゴアテックスのナイロンズボン、防水スパッツ、蒸れないポンチョ、そして、ビニール付き菅笠、アウトドライの運動靴だ。防水手袋も用意したが、手が寒くなることもなく不要と思えた。また、小雨程度しか遭遇していないが、本降りと強風にこれで耐えられるか様子をみたい。

7.友人宅での初宿泊

徳島の友人ご夫婦を訪ねた。井戸寺から恩山寺の間に家があり、直接伺うことになった。まだ歩き始めで道感覚が磨かれてなかったが、道案内の地図がパソコンから送られてきたので迷わず伺うことができた。昨年阿波踊りで伺ったこともあり、何となく不安感はなかった。途中、イチゴ農家があり、お土産に分けて頂いた。すると同量をお接待で頂き感激した。イチゴをつまみながら友人宅へ伺った。20番札所鶴林寺の奥の院慈眼寺へ案内して頂いた。車でこれから歩いて行く先の下見ができ、興味深かった。棚田のある町から神山温泉まで行った。この神山はIT関係者がサテライトオフィスを作って移住したり、芸術家が集まる町で脚光を浴びている。高台から先日苦労して歩いた焼山時の尾根を眺めたり、帰りに大日寺まで車で通ったが、まさに先日歩いた道で感慨深いものがあった。久しぶりに居酒屋で焼き鳥を食べ、酒を酌み交わした。翌日は、日曜市を覗き我楽多を見て回り、日常に身を置いた。足癒しシートを頂き、これからの足裏の疲れ対策ができた。 

8.発心

ウグイスが鳴き、花が咲き乱れる遍路道を歩き、遍路ころがしを乗り越え、雨の中も歩き、1日20キロを超える道のりを歩き通したことで、何とか88番札所まで歩き通す覚悟が出来た。また、接待による声援、友人からのメールでの声援、遍路宿の温もり、自然の素晴らしさに触れ、歩くことの楽しさも味わい、生活のリズムもでき、俗世間から離れ一心に歩く修行の道場に進める気がした。