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西条*まとめのまとめ

「周桑平野を見晴らす寺」興雲寺

まいぷれ編集部がお届けする、地域の「寺社まとめ」第一弾。今回は西条市小松町の興雲寺さんをご紹介します。境内から瀬戸内海まで見渡せる魅力あるお寺に、長い歴史やこれまでの活動、現代のお寺のあり方について、取材させていただきました。

「周桑平野を見晴らす寺」というキャッチコピーで知られる興雲寺。調えられた境内には落ち着いた空気が流れています
エクステリアデザイン会社「吉田ランドスケープ・Hachitasu」が手がけた境内は、伝統ある禅寺でありながら年代を問わず楽しめる印象。穏やかな気持ちになります
境内からの眺めは飛ぶ鳥と同じ高さ。天気の良い日に、是非この景色を楽しんでみてください!

興雲寺の歴史

興雲寺の歴史は古く、飛鳥時代の大宝2年(702年)にまで遡ります。
当時長勝(松)寺と呼ばれていたお寺が現在の興雲寺の場所にあり、薬師如来という仏さまの霊地として、人が集まり、信仰されていたと伝えられています。
その後岡山県矢掛町にある洞松寺の茂林芝繁和尚(1393~1487)を御開山とし、曹洞宗となります。乱世の戦禍に巻き込まれ荒廃していた時期もありましたが、それらを乗り越えて再造され、江戸時代の宝永2年(1705)に興雲寺と改称されました。
現在のご本尊は釈迦如来(お釈迦さま)、脇侍に薬師如来と聖観世音菩薩をお祀りしています。
もう一つの庭も純和風の趣きです! 参拝される際には、禅のお寺の空気に浸ってみてください

地域の「拠り所」となる、現代のお寺の在り方

興雲寺第二十世住職の高木一晃さんは、お寺の長い歴史を受け継ぎ、活動しながら、これからのお寺の在り方について考え、様々な取り組みをされています。
「東京の駒澤大学仏教学部を卒業して、本山での修行を終えた後、今治に戻ってきました。公民館に勤めながら、父が住職を務めていた野間寺で13年間副住職として活動していました。
興雲寺の前住職が八十歳で引退されることとなり、縁あって私が後任として寺務を務めることになりました。誰も知らない状態から西条に入ってきて、皆様から色々なことを教わりながら、今まで務めてまいりました。
『人が集い、学びあい、そして人と人とがつながる』寺院づくりに務めていきたいという最初の思いは、興雲寺の住職として11年経った今も変わることはありません」
現代のお寺の在り方について、地域の「拠り所」として機能したいという思いがあるとのこと。
「昔、お寺はコミュニティの中心として地域に存在していました。寺子屋という言葉にもあるように、お寺の住職が学校の先生を務めたり、医師、カウンセラー、役場などの様々な機能を果たしていて、お寺の境内で近所の子供たちが遊んだり、地域の方やお年寄りなど、自然と人が集っていた。その中で仏教の教えに触れて、学んでいくことがあったと思います。
現代はそれぞれの仕事が専門職となり、お寺も法事や葬儀など専門の仕事を務めるようになりました。かつてのコミュニティだったお寺の代わりに公民館が機能するようになり、地域社会の希薄化、少子高齢化などの問題に対して、公民館勤務時には地域コミュニティ事業を初めとした様々な取り組みを行ってきましたが、行政の力だけでは解決できない部分もあります」

「今の世の中に必要とされている、穏やかな気持ちで日々を過ごすこと、今生きている命の有難さを感じること、そういった学びの場の入り口としてお寺が機能していければと感じています」
こちらが日々の読経が行われる本堂。今後予定されている坐禅の体験イベントなどでも開放される予定です

事故を境に変わってしまった景色

高木住職が地域で行っている活動は様々だが、大きな転機となった活動の一つに、八年以上継続されている「交通事故受難者慰霊供養」がある。
「『フリースタイルな僧侶たち』というフリーマガジンの取材で取り上げられたことで、宗派を超えて地域に働きかけていくきっかけとなった活動です。全国の熱意ある若手住職の活動を見て、後押しされて始まりました。
この供養のきっかけは、近所にお住まいだった女性の檀家さんが亡くなられた事故でした。興雲寺のすぐそばの国道です。前日にお会いしたばかりで、お孫さんを連れてよくお参りに来てくださった方でした。お通夜でご遺族を前にすると、話すべき言葉が見つからず、僧侶としての無力さを痛感しました。
その日以来、毎日通っていた何気ない道が事故現場となり、景色が変わって見え始めたのです」

「その後、ご遺族から『事故現場でお経を唱えていただけないか』という依頼があり、一緒に事故があった場所へ向かって、読経させていただきました。
その時にハッと気づいたことが、後の活動につながっていきます。私たち僧侶はお寺や葬儀場では読経するけれど、人が亡くなられた場所で読経したことがなかった。その後、全国曹洞宗青年会の研修会に出席し、茨城県の僧侶が事故現場をめぐる慰霊活動を行っていると知りました」

「研修会に出席した後、帰りの電車の中で、秋の交通安全運動の期間がお彼岸の時期に重なることに気づき、これは何かやらなければならないと思った。準備期間もあまりない中、研修会に一緒に参加していた後輩住職や地元の警察署の協力もあり、交通死亡事故現場を回って読経する慰霊行脚が始まりました」
こちらが、高木住職の活動について掲載された「フリースタイルな僧侶たち」四国版38号
3.11の震災時には、被災地へ復興支援活動に参加している高木住職。長年寄付活動も行っています

楽しいだけではない、学びのあるイベント

「『お彼岸まつり』では、キッサコさんを招いての本堂でのライブを開催しました。地域の方のコミュニティとなるように、という私が就任してからの思いをコンセプトにしたイベントです。お寺で開催するものですので、楽しい中にも学びのある、そんなイベントになるよう意識しています。
今後も、仏教に興味のある方への入り口として、お釈迦さまが悟りを開いた際のエピソードに思いを馳せる、ヨガと坐禅の体験の後に特製のスープをいただくというイベントを企画しています」

「ヨガと坐禅は大元が同じものです。イベントでは、賛同してくださるヨガの先生やカフェの方を招いて、当時のお釈迦様に思いを馳せて追体験できるような内容です。お釈迦様が苦行の後にいただいた乳粥をスープに見立てて、心身を調える時間を過ごしていただければと思います。
本格的な坐禅堂は提供できませんので、本堂での開催となりますが、初心者の方でも体験しやすい内容になっています」
老若男女問わず、お寺に足を運んでもらいたいという思いが伝わります。
高木住職が坐禅、Y-yogaの越智友海講師がヨガを指導。体験後には西条で人気のDedecafeさんの作ったスープやドリンクが振舞われます
イベント時には特別に開放される本堂で、ゆったりと心身を調えてみてください

曹洞宗の「禅」の世界

イベントで体験できる「坐禅」は、曹洞宗の修行で行われるものとは異なり、初心者向けの内容です。本格的な僧侶の修行では生活に坐禅を取り入れる、より難しい内容が行われるとのこと。高木住職に、少しだけ曹洞宗の「禅」についてお話を聞きました。
「坐禅は、よい結果を求めて行うものではありません。効果を求めるのではなく、結果的によい効果が現れるものです。修行はずっと続けていかなければならないもので、坐禅の初心者の方には、まず落ち着いて、呼吸に意識を向けるように教えています」

「心を落ち着けて静かに坐禅を続けると、『周りに振り回されず、自分で判断する力』が身についていきます。
現代はSNSの反応などに振り回されている方の多い時代です。自分の投稿に対する反応や評価、それは自分が今ここに生きていることとは関係のないことです。今、この瞬間にある命の大切さに、坐禅を通して気づくことができます」

「禅」とは?

高木住職にとって、禅とは?
「『今、ここにいること』です」

「他者の評価や情報に振り回されがちな時代、今ここに自分がいると気づくことで、自分を見失わずにいることができる。伝統的な仏教の教えは、多くの人とつながっている現代に逆行するようですが、今の時代にこそ禅の精神が求められているのではないかと思います」
インタビュー時に言われた「僧侶としての使命」という言葉の重みを感じさせる、幅広い活動を行われている高木住職。
被災地で実際に見なければ分からなかった体験など、記事の都合で割愛した内容もあり、またいつかご紹介できればと思います。
長時間の取材にも快く応じていただき、ありがとうございました!

興雲寺さんの詳しい情報はこちらから