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ショートショート小説「若返り薬」【酒井直行 作】 

新波出版(にいはしゅっぱん)

ショートショート小説『若返り薬』

 私はついに画期的な若返り薬を発明した。この映像を見ているお前たちは凡人揃いで理解できないだろうから詳しいことは省略するが、私の発明した薬のすごいところは、全ての人間が持つ「致死遺伝子」の一種を特定し、その活動をリバース(逆転)させることに成功したことだ。唯一の問題点といえば、この若返り薬は致死遺伝子が活性化し始めないと効果がなく、つまり私の計算では80歳以上にならないと飲んでも効き目がないこと。それと、若返りのスピードが異常に早く、ひと月に1歳ずつ若返ってしまうことぐらいだ。
 この若返り薬を毎日1錠、飲み続けることで、80歳以上の老人がみるみる若返っていくことを人体実験で証明した。嘘じゃないぞ。その人間は見事に若返ったのだ。被験者は私本人。そう、この私が自ら実験台になって薬の有効性を証明したのだ。どうだ? 昭和10年生まれ、今年で88の私だが、実験をスタートして早3年。今の私の見た目は50代の壮年男性そのものだろう。
 明日はついにマスコミ各社だけでなく海外特派員まで招いての盛大な発表会だ。世界中の話題をかっさらうことは間違いないだろう。数年後、ノーベル医学賞をもらうのも確実だ。
       ※                       ※
 翌日、半信半疑ながらも集まったマスコミの前に、楠木吾次郎医学博士が登壇することはなかった。彼は、前日の夜、滞在先のホテルで吐血し、救急車で病院に運ばれ、そのまま死亡していた。死因はガン。それも全身に複数の悪性腫瘍が急速に増殖しての突然死だった。病理解剖とその後の調査の結果、博士の発明した若返り薬の影響は、老化のために不活性化していたはずのガン細胞までも若返らせてしまったのだ。結果、あっという間にステージⅣの末期ガンになり、死に至ったことが判明する。
 博士の死を取り扱ったマスコミは1社もなかった。もちろん若返り薬のことも。
 あの夜以来、楠木博士の発明した若返り薬はその設計図と共に闇へと消えた。記者会見当日の朝にマスコミ各社に配布する予定だった映像データも一緒に消失した。
 数年後、引退したはずの政界のドンや、長年、信者の前から姿を隠していた大物宗教家や往年のハリウッドスター、中東の王族ら、80歳以上だった彼らが、突然、若々しくなった姿を世間に晒して、人々を驚かせた。ところが彼らはみな、ほどなくして末期ガンで病死する。果たしてこれは偶然なのだろうか。

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酒井直行
愛媛県出身。脚本家(日本脚本家連盟員)、小説家、漫画原作者。
代表作に、ドラマ「嫌われ監察官 音無一六」「医療捜査官 財前一二三」「京都金沢殺人事件シリーズ」、
特撮ドラマ「忍風戦隊ハリケンジャー」、アニメ「ドラえもん」、漫画「裁いてみましょ。」「Pハート」、ゲーム「ゼルダの伝説 ふしぎの木の実」「鬼武者」など。

新波出版では、AmazonkindleにてAmazon「事件記者〈報道癒着〉」Amazon「死への目撃者」を刊行。

※これからも不定期で、酒井直行作の「ショートショート小説」を発表していきます。お楽しみに!



基本情報

名称新波出版(にいはしゅっぱん)
フリガナニイハシュッパン
住所792-0003 新居浜市新田町1-6-25
電話番号0897-35-2280
ファックス番号0897-65-3612
メールアドレスniiha-publishing@newwave98.co.jp
営業時間9:00~18:00 平日
休業日土・日曜、祝日(祝日を除く第1土曜は営業)
関連ページ株式会社ニューウェイブホームページ
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事件記者[報道癒着]  購入ページ(Amazon Kindle)
死への目撃者  購入ページ(Amazon Kindle)
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