ショートショート小説「うそつき島」【酒井直行 作】
新波出版(にいはしゅっぱん)
ショートショート小説『うそつき島』
その島は、選ばれた人間しか住むことができない島だった。
生活費一切無料で小遣いまで支給され、誰もが住みたいと希望するが、審査に通過して島民になれたとしても、早い者だとわずか1日で出ていかないといけない不思議な島だった。
島に住むための条件はただ一つ。「島に住む間は必ずうそをつき続けなければならない」
この掟を破ってしまうと強制離島させられる。ちなみに、一日中、家に閉じこもって、誰とも出会わないというのもルール違反だ。
島の住民の数は百とも千とも言われているが真実は不明だ。誰に聞いても本当のことは教えてくれないのだから。町長が誰なのかも分からない。「あなたは町長ですか?」と住民に聞くと、誰もが「私が町長です」と答える始末。
島に住み続けて早6年。僕は明日、島を出る。理由は簡単だ。昨日で僕以外の誰もいなくなってしまったから。初めての掟破り。
翌日、本土と結ぶ船に乗り込もうとした僕は、上陸する新島民から声をかけられた。
「この島は、本当にうそつき島なんですか?」
「そうですよ」僕はそう答えて、船に乗り込んだ。
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酒井直行
愛媛県出身。脚本家(日本脚本家連盟員)、小説家、漫画原作者。
代表作に、ドラマ「嫌われ監察官 音無一六」「医療捜査官 財前一二三」「京都金沢殺人事件シリーズ」、
特撮ドラマ「忍風戦隊ハリケンジャー」、アニメ「ドラえもん」、漫画「裁いてみましょ。」「Pハート」、ゲーム「ゼルダの伝説 ふしぎの木の実」「鬼武者」など。
新波出版では、Amazonkindleにて
Amazon「事件記者〈報道癒着〉」Amazon「死への目撃者」を刊行。
※これからも不定期で、酒井直行作の「ショートショート小説」を発表していきます。お楽しみに!
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