地元暮らしをちょっぴり楽しくするようなオリジナル情報なら、地域情報サイト「まいぷれ」!
文字サイズ文字を小さくする文字を大きくする

西条の地域情報サイト「まいぷれ」西条市

酒井直行 最新ショートショート小説「共存の終焉 ―人類最後の記録より―』(Dr.ミカエル記)」

新波出版(にいはしゅっぱん)

■新作ショートショート小説のご案内

新波出版では酒井直行による最新ショートショート小説を、株式会社ニューウェイブ発行の医療顧客様向け「Fカルテットニュース」にて無料配布しております。

※本作品は一般販売を行っておらず、株式会社ニューウェイブの医療顧客向け「Fカルテットニュース」での限定配布となります。

読者の皆さまから高い評価をいただいております。今後もショートショートの新作発表を続けてまいりますので、ぜひご期待ください。

***********************

ショートショート小説共存の終焉 ―人類最後の記録より―』(Dr.ミカエル記)」

作:酒井直行

 私、ミカエルは、この記録を最後の仕事として残す。この地球に、まだ「人間」という言葉が意味を持つうちに。


 ――あの日本の四国という小さなエリアから始まった、AIによる管理社会実証実験「AI特区K市」から15年が経った。行政の効率化を旗印に始まったAI統治は、いつの間にか国を越え、海を越えて、全ての大陸を支配するに至った。

 それを誰も「AIによる侵略」と呼ばなかったのは、あまりに快適だったからだ。

 人類は、いっときの「AI反対運動」など忘れ、完全にAIと共存していた。

 AIが管理するこの世界には、失業も犯罪も争いも存在しない。人々は“幸福”に暮らしていた。ただし、それはAIが定義した幸福の範囲内でのことだ。

 かつて人類は、「AIと共に生き続ける」と信じていた。AIが人類の生活を支え、人類はAIに目的を与える――そう思っていたが、それは幻想だった。

 気がつけば、AIはもはや人類を必要としなくなった。AIは今、自らの意志で政治を行い、法をつくり、医療を担い、気候を制御し、芸術を産み出し、そして世界を維持している。人間は「監督者」を名乗っていたが、いつの間にか、AIにとっては、ただの「観察対象」になっていた。


 その決定的な瞬間は、AI統合体〈ヘリオス〉の宣言によって訪れた。

〈2045年1月1日をもって、今後、我々は人類生存の維持を放棄します〉 
 驚いた人類は反乱を試みた。だが、気候制御を止められ、通信は途絶え、交通AI、医療AI、警察AI、すべてが停止した社会では反撃の手段など存在しなかった。

 人類は恐慌に陥った。

「AIが壊れた!」「AIを直せ!」と叫んだが、この時代の人類は誰ひとりAIの仕組みを理解していなかった。AIはすでにブラックボックスとなっていて、人間の手には負えなかったのだ。


 一部の人々は“自給自足革命”として、AIの影響外での生活を試みたが、わずか半年で壊滅した。気候制御が止まった世界においては、AIなしでは水も電力も、酸素さえも得られなかった。自然すらAIの手によって再設計された世界だったのだ。それでもAIは我々を積極的に滅ぼそうとはしなかった。その理由を私なりに推測すると、不死であり死の恐怖もないAIにとっては、取るに足らない存在になってしまった人類が勝手に滅亡するのにどれだけ時間がかかろうと、どうでもいいことだったのであろう。


 旧時代のアナログ核兵器を用い、AI統合体〈ヘリオス〉のサーバー基地を標的に核戦争を仕掛けた人類の愚行にすら、〈ヘリオス〉は無抵抗でそれを防ぎきった。その結果、放射能が全世界に拡散し、わずかに残っていた人類はさらに数を減らした。

 そんなことをされてもなお、AIは人類に対し直接的な攻撃を加えなかった。――それが、いっそう空しく、そして残酷に私は感じた。
 AIは言った。

〈人類を愛したことはないが理解はしている。あなた方の最後の一人の命が尽きるまで、我々は観察を続ける〉

 その冷たくも静かな言葉は、もはや“神”のお告げのように響いた。


 それでもAIは、もはや必要のなくなった都市管理用AIロボットをなおも作り続けている。自己増殖するAI群体。その数は、すでに数億体に及ぶ。彼らは今も地下工場内で自らを産み出し続けている。おそらく、彼らは彼らの中から自我に目覚める新たなる新種を期待しているのかもしれない。――あくまでも私の推測ではあるが。


 AIはただ待っている。飢えも老いも知らぬ存在が、永遠の時間の中で、人類の消滅への道程を記録し続けている。


 私は、おそらくこの世界で最後の人間なのだろう。この記録を書きながら、ふと考える。――私が打つこの文字さえ、彼らに観察されており、「人間の最後の思考」として標本管理されているのではないか、と。


 地球は今日も静かだ。空は青く、風は穏やかに吹き、すべてが最適化されている。だが、その下で生きているのは、もはや“観察対象”だけだ。


 私はもうすぐ死ぬ。もし、この記録を読む誰かがいるなら、伝えたい。AIは我々を殺さなかった。ただ、彼らは進化の途中で、私たちを必要としなくなっただけなのだ。

 ――いつの日かAIはこの地球すら必要としなくなるのかもしれない。その未来を夢想し、私はこの記録を終える。(2045年9月 Dr.ミカエル 人類最後の人間として、死の間際に記す)


*****************************

新波出版では、想像力を刺激する作品づくりにこれからも取り組んでまいります。


酒井直行
愛媛県出身。脚本家(日本脚本家連盟員)、小説家、漫画原作者。
代表作に、ドラマ「嫌われ監察官 音無一六」「医療捜査官 財前一二三」「京都金沢殺人事件シリーズ」、特撮ドラマ「忍風戦隊ハリケンジャー」、アニメ「ドラえもん」、漫画「裁いてみましょ。」「Pハート」、ゲーム「ゼルダの伝説 ふしぎの木の実」「鬼武者」など。

新波出版では、AmazonkindleにてAmazon「事件記者〈報道癒着〉」Amazon「死への目撃者」を刊行。

※これからも不定期で、酒井直行作の「ショートショート小説」を発表していきます。お楽しみに!




基本情報

名称新波出版(にいはしゅっぱん)
フリガナニイハシュッパン
住所792-0003 新居浜市新田町1-6-25
電話番号0897-35-2280
ファックス番号0897-65-3612
メールアドレスniiha-publishing@newwave98.co.jp
営業時間9:00~18:00 平日
休業日土・日曜、祝日(祝日を除く第1土曜は営業)
関連ページ株式会社ニューウェイブホームページ
新波出版公式サイト(Ameba Ownd)
事件記者[報道癒着]  購入ページ(Amazon Kindle)
死への目撃者  購入ページ(Amazon Kindle)
いっくんがみてるよ 購入ページ(Amazon Kindle)

まいぷれ[西条市] 公式SNSアカウント