地元暮らしをちょっぴり楽しくするようなオリジナル情報なら、地域情報サイト「まいぷれ」!
文字サイズ文字を小さくする文字を大きくする

西条の地域情報サイト「まいぷれ」西条市

酒井直行 最新ショートショート小説「バカップルの末路」

新波出版(にいはしゅっぱん)

■新作ショートショート小説のご案内

新波出版では酒井直行による最新ショートショート小説を、株式会社ニューウェイブ発行の医療顧客様向け「Fカルテットニュース」にて無料配布しております。

※本作品は一般販売を行っておらず、株式会社ニューウェイブの医療顧客向け「Fカルテットニュース」での限定配布となります。

読者の皆さまから高い評価をいただいております。今後もショートショートの新作発表を続けてまいりますので、ぜひご期待ください。

***********************

ショートショート小説「バカップルの末路

作:酒井直行


 その冬、日本列島は数十年に一度と言われる歴史的大雪に見舞われていた。ニュースは朝から晩まで「不要不急の外出を控えてください」と繰り返していたが、そんなことはどこ吹く風で大学生カップルのユウタとミナは、最新の電気自動車でスキー場へ向かっていた。


「ねえ見て、雪すごい!」

 助手席のミナがスマホを掲げる。フロントガラスの向こうでは、白い雪がライトに照らされ、横殴りに吹きつけていた。

「やば、ホワイトアウトじゃん。動画撮ってインスタにあげよ」ユウタの言葉にミナはすぐにSNSへ投稿した。
《やばーい、雪すごすぎて前見えないwww遭難するかも(笑)》
 数分で「いいね」が300を超えた。

「すごい、ちょっとバズってる!」ミナは楽しそうに笑った。

 しかし、その直後だった。前方の車列が完全に止まった。高速道路は渋滞でびくともしない。ユウタがブレーキを踏んだまま少し焦る。バックミラーの向こうにも、雪に埋もれた車列が続いていた。

 ミナはまた投稿した。

《渋滞巻き込まれちゃったんだけど。私たちピンチかも》

 今度はコメントが一気に増えた。

<早く高速降りろ>

<いや動くな。下道も渋滞してる>

<EVは暖房で電池減るぞ>

<エンジン止めろ>

<救助待て>

<歩いてサービスエリア行け!>

「なんか、みんなアドバイスくれてる」

 ミナが興奮して運転席のユウタに画面を見せる。

「“降りろ”って人多いな」

「じゃあ降りようか」

 ユウタが、車列を外れ、高速道路の路肩へとハンドルを切ろうとした、その瞬間新しいコメントが流れた。

<動くな! 路肩は通行禁止だ、緊急車両が通れなくなる>ユウタは慌ててハンドルを戻した。

「……やっぱ待とう」


 1時間が過ぎた。雪はさらに激しくなっていた。ミナは投稿を続けている。

《EV車の電池、あと40%》

 コメントはさらに増えた。

<暖房を切れ>

<いや切るな凍死するぞ>

<電池を温存しろ>

<いや逆だ>

 SNSのコメント欄同士で言い合いが続く。二人は顔を見合わせた。

「暖房どうする?」

「“切れ”って人が多いかな」

 ユウタは暖房を止めた。車内の空気が少しずつ冷えていく。30分後、新しいコメントが流れた。

<凍死するぞ、暖房入れろ!>

 バカップルはコメントに従い、暖房を入れ直すが、バッテリー残量はゆっくりと減っていく。


 夜になった。外は完全な吹雪だった。車列は一台も動かない。ミナは震えながら投稿した。

《電池あと10%、ほんとやばい》

 すでにインスタのコメントは10万件に達していた。

<車を捨てて、歩いてSA行け>

<車を放置するな、そこを動くな><寝るな><歩け><車内待機が正解>

 ユウタとミナはスマホ画面を茫然と見る。

「どうすればいいんだよ……」

 その時、車のモニターがアラート信号を発する。

【バッテリー残量3%を切りました】

 暖房が止まった。車内の温度が急速に下がる。外は氷点下10度。


 ミナは震える手で投稿をした。

《電池切れた。さむい》

 それがミナの最後の投稿だった。


 翌朝。除雪車が高速道路を開通させると同時に、自衛隊と救助隊が車列の一台一台を確認して回っていた。
「ここ! 二人います!」

 ドアがこじ開けられた瞬間、凍死寸前だったユウタとミナの体に毛布がかけられた。

「まだ息がある! 救急搬送だ! 急げ!」


 数時間後。病院のベッドの上で、二人は点滴を受けながら、ぼんやりと目を覚ました。ミナがかすれた声で言う。

「……生きてる?」

 ユウタが弱く笑う。

「……ああ生きてる、でもそれより、、、」

 二人は声を合わせて看護師に「ねえ、私たちバズってますか?」と質問をぶつけ、すぐさまスマホを充電し、インスタを立ち上げる。

 ミナが歓喜の叫びをあげる。「すごい! 100万以上、私たちを心配してくれるコメントにあふれている」

 ユウタが無事救助されたことを発信すると、すぐさまコメント数が更に300万件を超え、メッセージが届いた。

<生きててよかった>

<マジで心配した>

<救助されて安心した>

<二度と無茶すんなよ>

<奇跡だろこれ>

 ミナは涙ぐみながら笑った。

「ねえ……めっちゃ応援されてるじゃん」

 ユウタも頷く。

「……俺たち、有名人じゃん」


 その後、二人は、「心配させ系インスタグラマーバカップル」として一躍有名になるが、二年後の夏、「サハラ砂漠を軽装備で横断してみるチャレンジ」で、全世界注目の中、遭難。以降、消息不明だという。

 その際の最後のコメント数は1億を超えていた。


*****************************

新波出版では、想像力を刺激する作品づくりにこれからも取り組んでまいります。


酒井直行
愛媛県出身。脚本家(日本脚本家連盟員)、小説家、漫画原作者。
代表作に、ドラマ「嫌われ監察官 音無一六」「医療捜査官 財前一二三」「京都金沢殺人事件シリーズ」、特撮ドラマ「忍風戦隊ハリケンジャー」、アニメ「ドラえもん」、漫画「裁いてみましょ。」「Pハート」、ゲーム「ゼルダの伝説 ふしぎの木の実」「鬼武者」など。

新波出版では、AmazonkindleにてAmazon「事件記者〈報道癒着〉」Amazon「死への目撃者」を刊行。

※これからも不定期で、酒井直行作の「ショートショート小説」を発表していきます。お楽しみに!




基本情報

名称新波出版(にいはしゅっぱん)
フリガナニイハシュッパン
住所792-0003 新居浜市新田町1-6-25
電話番号0897-35-2280
ファックス番号0897-65-3612
メールアドレスniiha-publishing@newwave98.co.jp
営業時間9:00~18:00 平日
休業日土・日曜、祝日(祝日を除く第1土曜は営業)
関連ページ株式会社ニューウェイブホームページ
新波出版公式サイト(Ameba Ownd)
事件記者[報道癒着]  購入ページ(Amazon Kindle)
死への目撃者  購入ページ(Amazon Kindle)
いっくんがみてるよ 購入ページ(Amazon Kindle)

まいぷれ[西条市] 公式SNSアカウント