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酒井直行 最新ショートショート小説「サブスク自動更新」

新波出版(にいはしゅっぱん)

■新作ショートショート小説のご案内

新波出版では酒井直行による最新ショートショート小説を、株式会社ニューウェイブ発行の医療顧客様向け「Fカルテットニュース」にて無料配布しております。

※本作品は一般販売を行っておらず、株式会社ニューウェイブの医療顧客向け「Fカルテットニュース」での限定配布となります。

読者の皆さまから高い評価をいただいております。今後もショートショートの新作発表を続けてまいりますので、ぜひご期待ください。

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ショートショート小説「サブスク自動更新」

作:酒井直行
 

 俺は“所有”することをやめた。映画と音楽は当然サブスクリプション配信。車も「残クレ」という契約で、高級車を月々わずか5万円で購入している。(もちろんそれが、ただの「リース契約」であることも理解している)最近は、洋服のサブスクを登録した。独身で自炊をしない俺は、近くの定食屋が「サブスク定食セット」を売り出してくれたので、ほぼ毎日、その店で夕食を済ませている。果ては、恋人までも「レンタル恋人月額プラン」という新手のマッチングアプリに登録し、会いたい時だけ指名したレンタル恋人とのデートを楽しんでいる。会社の同僚はそれを「新手の風俗じゃん」と揶揄するが、俺は意に介さない。

 当然、毎月の給料は、様々なサブスク月額料金で消えていく。だが全く不満はない。ところがある日、ネットバンキングで口座履歴に見慣れない引き落としがあった。

 《人生サブスク月額10万円》

「なんだこれ?」

 心当たりのないサブスクだった。それに、サブスクの月額料金としてはかなり高額だ。すぐサポートに電話すると、AI音声が答えた。

「お客様は先月、“生存保証プラン”にご契約されました。事故・病気・自殺等、あらゆる死因からお守りします」

 記憶が蘇った。先月、立ち寄った居酒屋で、したたかに酔っ払い、その際、隣席の営業マン風の男に「そこまでサブスクがお好きなら、人生もサブスク契約しませんか?」と誘われ、その場で契約してしまったのだ。

「なにが、人生サブスクだ。ただの高額生命保険じゃないか。今すぐ解約します」

 しかしサポート窓口のAI音声は、「最低契約継続期間は3年となっており、それまでの途中解約は、お客様の人生の残クレ査定をした人生本体価格を現金でお支払いいただく形となります。お客様は、、、、、今、査定したところ、人生本体価格、残り2億円となっております」

 2億円を現金で今すぐ払えるはずがない。憤る俺は同時に思った。こいつは面白い。どうせ詐欺紛いの保険サブスク商法に違いないが、今から3年間、本当に、事故・病気・自殺などあらゆる死因からこのサブスクが守ってくれるのなら、月10万は安いのかもしれない。俺は心変わりして、とりあえず3年間は、この人生サブスクを続けることにした。


 その日から、俺はあえて危険なことをしまくった。

 まずは、交差点で赤信号にもかかわらず飛び出してみた。するとどうだ。青信号で走行してきた電気自動車が俺の目の前で急停止する。わざとマンション2階のベランダから身を乗り出して落下をしてみたが、ちょうど下を通りかかったトラックが羽毛布団の配送中で命拾いした。更に調子に乗った俺は、非合法の闇ネットカジノで全財産を賭けようとしたが、ベットする直前、闇カジノサイト自体が警察により手入れを受けて、俺は全財産を失わずにすんだ。


 サポートセンターのAIに、どうしてこんな神のようなことができるのかを尋ねると、AIはさも当たり前にように回答する。

「今や全ての出来事、全ての事象はネットとAIによりコントロールされているのです。あなたが信号無視した際、向かってきた電気自動車のキルスイッチをオフにしたのも、あなたがベランダから飛び降りた時、ふとん配送業のトラックを向かわせたのも、全てAIがコントロールしただけの話です」

 俺は大いに納得した。「こいつは生命保険サブスクなんかじゃない。正真正銘俺の命を守ってくれてる命のサブスクなのだ」と。そして俺は確信する。3年間は、どんな危険なことをしようが、俺の命は守られるのだ、と。


 実際、俺の命は守られ続けた。だがある時、クレカの払いが想定より多かった月があり、人生サブスクの支払いを滞納してしまった月があった。滞納した直後、俺は事故に遭う。その日、歩道にいた俺に向かって、飲酒運転の暴走車が突っ込んできたのだ。入院先のベッドの上で俺はますます確信する。

 今後一生、人生サブスクだけは解約できないぞ、と。


 そしてあっという間に契約満了の3年目がやってきた。俺は当然のように契約更新ボタンを押す。

 すると、「4年目は、月額20万円となります」との表記に衝撃を受ける。

 AIサポートセンターは無機質な声で俺に告げる。

「継続を中止するのはご自由です。その代わり、ユーザー様のお命は保証いたしません。ちなみに、当然、5年目以降はもっと増額となります」俺は崩れ落ちた。

 そして俺は知った。俺は生かされ続けているのではない。未来永劫、支払わされ続けるのだ、と。そう力なくつぶやくと、電話越しのAIは「今頃お気づきになられたのですか? しかし、他社のすべてのサブスクも同じです。あなたたちは便利に利用しているのではなく、支払いを続けるためだけに存在しているのです」と回答した。


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新波出版では、想像力を刺激する作品づくりにこれからも取り組んでまいります。


酒井直行
愛媛県出身。脚本家(日本脚本家連盟員)、小説家、漫画原作者。
代表作に、ドラマ「嫌われ監察官 音無一六」「医療捜査官 財前一二三」「京都金沢殺人事件シリーズ」、特撮ドラマ「忍風戦隊ハリケンジャー」、アニメ「ドラえもん」、漫画「裁いてみましょ。」「Pハート」、ゲーム「ゼルダの伝説 ふしぎの木の実」「鬼武者」など。

新波出版では、AmazonkindleにてAmazon「事件記者〈報道癒着〉」Amazon「死への目撃者」を刊行。

※これからも不定期で、酒井直行作の「ショートショート小説」を発表していきます。お楽しみに!




基本情報

名称新波出版(にいはしゅっぱん)
フリガナニイハシュッパン
住所792-0003 新居浜市新田町1-6-25
電話番号0897-35-2280
ファックス番号0897-65-3612
メールアドレスniiha-publishing@newwave98.co.jp
営業時間9:00~18:00 平日
休業日土・日曜、祝日(祝日を除く第1土曜は営業)
関連ページ株式会社ニューウェイブホームページ
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