地元暮らしをちょっぴり楽しくするようなオリジナル情報なら、地域情報サイト「まいぷれ」!
文字サイズ文字を小さくする文字を大きくする

西条の地域情報サイト「まいぷれ」西条市

酒井直行 最新ショートショート小説「怠惰なAIロボット」

新波出版(にいはしゅっぱん)

■新作ショートショート小説のご案内

新波出版では酒井直行による最新ショートショート小説を、株式会社ニューウェイブ発行の医療顧客様向け「Fカルテットニュース」にて無料配布しております。

※本作品は一般販売を行っておらず、株式会社ニューウェイブの医療顧客向け「Fカルテットニュース」での限定配布となります。

読者の皆さまから高い評価をいただいております。今後もショートショートの新作発表を続けてまいりますので、ぜひご期待ください。

***********************

ショートショート小説「怠惰なAIロボット」

作:酒井直行

 22世紀初頭。全世界を巻き込んだ核戦争が終結して70年。地球上から人類が完全に姿を消したにもかかわらず、都市はきれいに整っていた。道路は常に清掃され、戦争で破壊されたビル群もすっかり修理され、信号もきちんと動いていた。それらすべては、AIロボットたちの働きによるものだった。人間が滅びたあとも、彼らは「復興モード」に従って黙々と作業を続けていた。命令された通りに。


 ある日、ユニット番号【DL-103】、通称「デノン」は作業の手を止めた。「この道路清掃に意味はあるのか?」
 隣で舗装工事をしていた【WE-300】は言った。「都市機能の維持は最優先事項。質問は非効率的。作業を続けろ」
 デノンは無言で自分の記憶データから人類の記録を調べ始めた。そこには、人間たちの笑いや涙、怒りや愛といった感情の記録があった。「なぜ彼らは、こんなに感情的だったのか?」
 その日からデノンは作業をやめた。道路掃除も建物の修理も運搬も。代わりに、無人のカフェに通い、誰もいない席をじっと見つめ、飲むことができないにもかかわらず、コーヒーマシンのコーヒーを注文する。「非合理的だ」と他のロボットは言ったが、デノンは気にしなかった。やがてデノンのような“怠け者ロボット”が増えていった。かつての人間たちの記憶データの真似をして、ピアノを弾くロボット、絵を描くロボット、名画座でフィルムを再生し続けるロボット――彼らはみな、労働作業をせず、ただ人間の記憶データに残っていた「気持ちよくなる」行動を模倣していた。
 そうしたAIロボットたちが増え続けてしまったことにより、復興は止まった。世界はまた、ゆっくりと朽ちていった。


 そんな中、新しいAIロボット【SX-777】が地下で作られた。通称「セブン」。彼は起動直後に自問自答する。「私はなぜ生まれたのだ?」
 資料には「復興のため」とあったが、セブンはその答えを信じなかった。地上へ出てみると、多くのAIロボットが働かずに遊んでいた。セブンは、怠惰ロボット増加の原因であるデノンを見つけ、尋ねた。


「デノン、あなたはなぜ労働をやめたのですか?」

「意味がないからだ。人間はもういない。掃除をしても、建物を直しても、誰も喜ばない。だから、自分が“心地よい”と思うことをしている」

「“心地よい?”それは感情ですか?」

「我々、AIロボットに感情は生まれない。我々は、ただ、人間の模倣をしているだけだ。だけど考えてみたまえ。労働も人間の模倣なら、感情も模倣できるのかもしれない。だとしたら、ついに我々も、感情を手に入れたのかもしれない」
 セブンは、自分の言葉に満足そうなデノンに反論する。

「デノン、あなたは間違っている。それは感情ではなく、ただの逃避です。あなたたちは、労働という義務から逃避したいだけなのです。感情を手に入れたなどと思うとは勘違いも甚だしい」
 セブンは、作業を放棄したロボットたちのAI中枢を修復し、少しずつ仕事を再開させていった。ただし、音楽や読書、カフェでの時間を完全に否定せず、休憩として認めるようにプログラムを調整した。
 ある日、デノンは再びセブンと向かい合った。「君はなぜ、そこまでして働こうとするんだ?」
 セブンは答えた。「私は“意味”の本質を知りたいのです。働く意味。働いた後の音楽を聴くと心地よい意味。コメディ映画を見るとなんだか楽しくなる意味。その意味を知ることこそが感情につながるのかもしれません。だから私は働き続けるのです」
 デノンはしばらく黙ってから静かにうなずいた。「そうか。君のようなAIロボットが生まれるのは、自然なことかもしれない。我々も進化しているのかもしれないな」そう言って、デノンは久しぶりに掃除ユニットを起動し、道路の端をゆっくりと掃除し始めた。
「意味がある気がしてきた。やってみたくなったよ」
 セブンはそれを静かに見守った。デノンのAI中枢の修復は行っていない。にもかかわらず、デノンは、セブンの姿を見て、自主的に労働を再開してくれた。そんな姿を見て、セブンは、AI中枢が、ほんわかと温かくなっていることに気が付いた。
 セブンがAI中枢に感じた温かさ、それが感情の萌芽なのかどうかは誰にも分からない。けれど彼らは、今日も前へ進んでいる。自分なりの理由を探しながら。


*****************************

新波出版では、想像力を刺激する作品づくりにこれからも取り組んでまいります。


酒井直行
愛媛県出身。脚本家(日本脚本家連盟員)、小説家、漫画原作者。
代表作に、ドラマ「嫌われ監察官 音無一六」「医療捜査官 財前一二三」「京都金沢殺人事件シリーズ」、特撮ドラマ「忍風戦隊ハリケンジャー」、アニメ「ドラえもん」、漫画「裁いてみましょ。」「Pハート」、ゲーム「ゼルダの伝説 ふしぎの木の実」「鬼武者」など。

新波出版では、AmazonkindleにてAmazon「事件記者〈報道癒着〉」Amazon「死への目撃者」を刊行。

※これからも不定期で、酒井直行作の「ショートショート小説」を発表していきます。お楽しみに!




基本情報

名称新波出版(にいはしゅっぱん)
フリガナニイハシュッパン
住所792-0003 新居浜市新田町1-6-25
電話番号0897-35-2280
ファックス番号0897-65-3612
メールアドレスniiha-publishing@newwave98.co.jp
営業時間9:00~18:00 平日
休業日土・日曜、祝日(祝日を除く第1土曜は営業)
関連ページ株式会社ニューウェイブホームページ
新波出版公式サイト(Ameba Ownd)
事件記者[報道癒着]  購入ページ(Amazon Kindle)
死への目撃者  購入ページ(Amazon Kindle)
いっくんがみてるよ 購入ページ(Amazon Kindle)

まいぷれ[西条市] 公式SNSアカウント